Whole Earth Catalog Spring 1969

Bibliographic Details

Title
Whole Earth Catalog Spring 1969
Author
Stewart Brand / スチュアート・ブランド
Publisher
Portola Institute / 非営利団体ポートラ・インスティテュート
Year
1969
Size
h370 × w275 × d10
Weight
380g
Pages
132 pages
Language
English / 英語
Binding
stapler saddle stitching / ホッチキス中綴じ製本

二十世紀の「本の本」で
もっとも影響力があった出版物は
これかもしれません。

1968年、スチュワート・ブランドがアメリカ西海岸で創刊した「ホールアースカタログ」は、創刊してすぐに爆発的な人気を博した。毎号の表紙は、宇宙からみた地球の写真で、NASAに対して写真の公開をしつこくはたらきかけたブランドのチーム力を物語っている。雑誌の編集方針は、副題にもなっている「access to tools」というコンセプトで、地上にくらす全地球人のために、役に立つツール(知恵や道具)を紹介するという内容だった。これが当時のヒッピーコミューンやカウンターカルチャーの実践者、デザインや建築、テクノロジーの分野の革新者に大当たりした。1971年の最終号『The Last Whole Earth Catalog』はなんと150万部を超えるベストセラーとなり、全米図書賞(National Book Awards)を受賞した。

創刊から50年以上が経ち、発行期間もたった3年ほどだったのに、その影響力はさまざまな方面からいまなお再評価されている。2005年にはスティーブ・ジョブズがスタンフォード大学で行なったスピーチの中で『Whole Earth Epilog』(1974)に記されていた 「Stay hungry. Stay foolish.」 を引用して話題になった。2011年にニューヨーク近代美術館(MoMA)で『ホールアースカタログ』を題材にした「Access to Tools」展が開催されたことも記憶にあたらしい。それにしても、わたしたちは、この雑誌が展開した「ツール」のほとんどが「書物」だったこと、この雑誌が「本の本」だったことにあらためて驚いている。

この雑誌は、まだインターネットがない時代に、「カタログ」というスタイルを採用し、自然科学、建築、アート、農業など、あらゆる場面でオルタナティブな生活環境をつくるために、DIYの道具などとともに「本(参考書籍)」を誌面いっぱいに展開した。ここに掲載された本や商品は、カタログに挟み込まれた申込用紙で発売元から購入することもできて、紹介された本を媒介にしたコミュニティも次々に派生していった。

編集部や読者が推薦していったオススメの本は、生活のなかですぐに使える実用書や指南書から建築やデザインの先駆的なビジョンまでさまざまだった。バックミンスター・フラーやマーシャル・マクルーハンの哲学や思想は「ホールアースカタログ」が広めたといってもいい。フラーに及んでは、カタログの最初のセクション「Understanding Whole Systems」にはっきりと「バックミンスター・フラーの洞察がこのカタログを始めた」という一行があるほどだ。ほかにも、ダーシー・トムソンの『生物のかたち』やノーバート・ウィナーの『人間機械論』が紹介されているあたりに、実用書ばかりではない「全地球カタログ」の奥行きがある。



Text by 櫛田 理