オニオンスキンポスター / 潮田登久子
Bibliographic Details
- Title
- Onion Skin Poster / オニオンスキンポスター
- Artist
- Photo by Tokuko Ushioda / 潮田登久子
- Designer
- Kazunari Hattori / 服部一成
- Publisher
- FRAGILE BOOKS
- Year
- 2022
- Size
- h594 × w841 × d0.04 mm
- Pages
- 4 sheets / 4枚入り
- Printing
- 吉田印刷所
- Materials
- 0.04mm thin paper / 厚さ0.04ミリの薄葉紙
- Condition
- New / 新品
This product is delivered in a round kraft tube. / この商品はクラフト製の丸筒に入れてお届けします。
厚さ0.04ミリ。
写真家 潮田登久子による
本のポスター。
FRAGILE BOOKS のオリジナルポスターは、厚さ0.04ミリのオニオンスキンポスター。そのまま壁に飾ったり、贈りものを包んだり、さまざまな場面でお使いいただけます。
オニオンスキンポスターの第一弾として、写真家の潮田登久子さん(1940-)が20年以上にわたって撮りつづけている「本の景色」から、4種のモノクロ写真をプリントしました。
ふと、オブジェとして本を撮ってみたいと思ったことがきっかけで、これまで公立図書館や大学図書館、個人の書斎や出版社の編集室、師である大辻清司のアトリエなど、さまざまな場所を訪ねてきました。潮田さんのライフワークです。
4枚の写真ポスターをセットにしてお届けします。
1. 文藝倶楽部
金文字のある背を覆っていた革が、劣化破損して現れた下張りには新聞紙が使われており、そこには博文館から発行されていた明治時代の人気雑誌『文藝倶楽部』(1895-1933)の広告が覗いています。『文藝倶楽部』には樋口一葉、尾崎紅葉らが常連の作家として名を連ねていました。修復を終えると、この新聞広告は下張りの役目に戻り、もう二度と目にすることは出来なくなってしまった。
2. 包帯
潮田さんの知り合いが図書館長になったことで、早稲田大学図書館から撮影許可が出た。大学の特別資料室の収蔵庫に入って先ず目に入ったのが、書架に包帯とも鉢巻きとも見てとれる格好の本で、整理ナンバーも無くボロボロに傷ついていて痛々しいとも、優しく手当してもらっているようでもあり、「これは面白い」と思った。何日もかけて撮影したものをプリントして報告がてら司書の人に見せると、「修復に手が回らないのを見られるのは恥ずかしい」というような微妙な反応だったそうです。
3. あばら骨
潮田さんと中世装飾写本との出会いは、小さな出版社に勤める知人に「15世紀末にスペインの教会で使われていたすごい本があるから見に来たら?」と声をかけられ、出かけたのがきっかけだったそう。本が包まれていた濃いクリーム色の厚手の布を開いてひと目見るなり潮田さんはその存在感に圧倒された。その痛々しい姿に、夫の伸三さんはゴルゴタ(Golgotha)の丘の十字架上に貼付けにされたイエス・キリストのやせ細ったあばら骨を見ているような気になったそうです。
4. ブロッコリー
2008年の秋。小学1年生から辞書を使い始める様子を紹介するテレビ番組を見ていた潮田さんは、その内容が気になったらしく、手紙を書き始めました。ブラウン管の青い光の中で、京都・立命館小学校の深谷圭助先生が、文字を習い始めた1年生に辞書の引き方を教えていました。子どもたちは身の回りの「モノ」や「コト」を手当たり次第に調べ、調べた言葉に次々と付箋を貼っていきます。その1年後の結果が付箋だらけでブロッコリーのようになった辞書でした。
Message
様々な時代に多様な運命を辿ってきた「本」に触っていると、不思議な感慨が湧いてきます。 ヨーロッパのどこかの国の教会の祭壇で、王様のように座っていた、ひとかかえもある聖書が目の前にある不思議。鉄と木と麻縄と羊の皮で作られたそれは、長い歴史の中で、見るも無惨に変わり果てた姿をさらしています。わずかに残る羊の皮の上に印された赤色の四線譜の上で踊る四角い音符からは、はるか昔の人々の祈りが聞こえてくるではありませんか。 室町時代なのか、或いは江戸のものなのか、黄ばんだ和紙にかかれた屏風仕立ての経文に、一面星屑のように穿られた無数の穴は、小さな昆虫のシバンムシが、来る日も来る日も経を唱えるように食んでいた証ではないかと思ったりしています。 「本」をオブジェとして写真撮影を試みているうちに、情報の担い手という「本」自体が持っている役割を超えて、新たに「本」そのものの存在が魅力となって浮き立ってきて、興味がつきません。
潮田登久子
Profile
潮田登久子 / Tokuko Ushioda
1940年東京生まれ。写真家。桑沢デザイン研究所で石元泰博氏、大辻清司氏に師事し、1963年に卒業。1966年から1978年まで桑沢デザイン研究所および東京造形大学講師を務める。1975年頃からフリーランスの写真家として活動、現在に至る。主な著書に『冷蔵庫/ICE BOX』(光村印刷株式会社)、『みすず書房旧社屋』(幻戯書房)、『先生のアトリエ』(幻戯書房)、『本の景色 BIBLIOTHECA』(幻戯書房)、『マイハズバンド』(torch press)がある。2018年には、第37回土門拳賞(毎日新聞社主催)、日本写真協会賞作家賞、第34回写真の町東川賞国内作家賞。2022年には、Paris Photo–Aperture PhotoBook Awards 審査員特別賞(写真集『マイハズバンド』)を受賞。
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Text by 乙部恵磨