泉福寺焼経 / Senpuku-ji Yakekyo

Bibliographic Details

Title
Senpuku-ji Yakekyo / 泉福寺焼経(華厳経七行断簡)
Author
Anonymous / アノニマス
Images
A fragmentary leaf of seven lines from Kegon Sutra / 華厳経七行断簡
Year
Heian Period / 平安時代
Size
h195 × w128mm
Language
Japanese / 日本語
Binding
One print with simple mount / 台貼未装
Printing
Handwritten sutras / 写経
Materials
Indigo-dyed paper with gold boundary and gold foil / 藍紙金界金箔散料紙
Edition
Unique / 一点物
Condition
Well preserved for 1000 years / 1000年間の保存状態

burned sutra of Sempukuji Temple

藍紙に金箔、
焼け残った残欠。
平安時代

薄緑色の料紙に金箔を散らした優美な写経で「泉福寺焼経」の名で広く知られています。
奈良国立博物館蔵本の巻頭に「泉福寺常任」の朱文が捺されており、もと河内国にあった泉福寺に伝来したとされますが、確かなことは分かっていません。

平安時代特有の和様の優しい筆跡を示すと共に金箔散と金界が薄緑色の料紙に映え、火災に遭ったことによる無残な焼損が皮肉にも見事な調和美を魅せています。著名な手鑑(古筆切や経切を収めたアルバムのようなもの)には必ずと言っていいほど所収されており、装飾経の代表的な遺品として愛好されてきました。当店に古写経を求めてご来店されるお客様の中には「先ずは泉福寺焼経が欲しい!」と言われる方が多く、古写経・仏教美術好きの方に、長年親しまれている逸品です。
 
今回ご紹介する断簡は大方広仏華厳経巻第三の盧舍那佛品の一節。

「盧舍那佛」と聞いてまず思い浮かぶのはやはり東大寺の大仏です。東大寺は華厳宗の大本山の寺院で現代に至るまで広い信仰を集め、日本の文化に多大な影響を与えてきました。なかでも大仏(盧舎那仏)は東大寺の象徴的存在として日本国内のみならず世界的にも広く知られています。

2行目と6行目に「盧舎那」とあり、盧舎那仏に関する記述のようです。内容は「盧舎那仏は常にあらゆるもののために法を説いてくださる」「種々の宝の花が覆いつめ盧舎那仏がいたるところ人々に姿を見せてくださる」と言った処でしょうか。時間も空間も超越した絶対的な存在としての仏について説いています。

当該断簡は金箔が多く散りばめられており優美な印象を受けます。天地は無残に焼け焦げて濃い茶色に変色し、中央に向かって薄茶色に変色し見事なグラデーションとなり、もとの薄緑色・金色の線・経文の黒といった色が混在した現代アートにも通じる絵画作品のようです。現代の空間に飾っても違和感はなく、日常を豊かに彩ってくれるでしょう。
 
奈良時代に日本に仏教が伝わって以来国を挙げて写経事業が行われ、平安時代になると和様の優しい書体になり、装飾に富んだ写経が制作されるようになりました。泉福寺焼経を見ていると平安人の精神性を現したように思え、まるで自らの美意識を表現する喜びに溢れているかのようです。


Text by 櫨木 脩(潮音堂)