Paper Cats / 服部一成
Bibliographic Details
- Title
- Paper Cats
- Author
- Kazunari Hattori / 服部一成
- Editor
- Osamu Kushida / 櫛田 理
- Publisher
- BON BOOK / 図書印刷株式会社
- Year
- 2021
- Size
- w148 × h210 × d10mm
- Weight
- 185g
- Pages
- 48 pages
- Language
- Japanese / 日本語
- Binding
- Hardcover / ハードカバー
- Printing
- offset printing / オフセット印刷
- Condition
- New / 新品
Layout Design by Kazunari Hattori 服部一成、Book Design by Yoshihisa Tanaka 田中義久、Sales Cooperation by 無印良品 MUJI BOOKS、Printing and Binding by TOSHO PRINTING CO., LTD. 図書印刷株式会社
たしかにそんなことが
一回起きたよね
という偶然のデザイン。
FRAGILE BOOKSのロゴやケアマークなどキーデザインの一切を引き受けてくださった服部一成さんの一冊。アートディレクターとして、
グラフィックデザイナーとして、やさしいのに鋭い独自のデザイン観をしぜんに展開している服部さんは、雑誌『流行通信』や『真夜中』や『here and there』、旺文社『プチ・ロワイヤル仏和辞典』や『仲條 NAKAJO』など、数多くのブックデザインを手がけてきたわりに、意外にも自著装丁本は一冊もなかったという。本書は、服部一成が企画、撮影、デザイン、執筆のいっさいを仕上げたアーティストブックになっている。
この本には、ハサミで切り抜いて、写真に撮った23匹の「紙の猫」が登場する。ワンテーマをシンプルに貫いた一冊で、だれでも真似ができそうで、なかなかこうは仕上げられない、いかにも服部さんらしい小品集といえる。48ページのハードカバーを青色の表紙で包んだその佇まいは、さながら洋菓子の包装のよう。発行元は、老舗印刷会社がはじめたBON BOOK出版レーベル。編集は当方が担当した。
「たぶん、ぼくは写植を経験した最後の世代」と言っていた服部さん。1988年入社のライトパブリシティ時代から2001年の独立を経て現在に至る、およそ30余年のあいだに、文字組や組版から印刷出版のしくみまで、デザイナーを取り巻く環境はガラガラと変わっていった。道具が飛躍的に進化していくなかで、服部さんは、いやちょっと待てと立ち止まって、数値で測ったように仕上げていくデザインワークに抗った。抗うというと、ちょっと大袈裟だけど、嫌だったのだと思う、予定された通りにこなすデザインは。
そうやって偶然のデザインを取り込んだ「キユーピーハーフ」の広告や雑誌『流行通信』など、服部さんの代表的な仕事が生まれた。そして、本書である。
西麻布にある服部さんの事務所を訪問した最初の打ち合わせで、本書の骨子はだいたい決まってしまった。ときどき鋭いツッコミをときどき入れつつ、相手の意図を汲み取り、じぶんのデザインに置き換えるのがとてつもなく早い人なのだ。途中であれこれ寄り道しない、悶々とした雑談もない。とくに今回は「じぶんの身体でデザインする」ことへの渇きが、服部さんを突き動かしていた、ようにおもう。
猫がモチーフになったのは、たまたま。とはいえ、企画の草案として、平凡社のPR誌「月刊百科」の表紙で服部さんがデザインしていた42匹の猫を一冊に、という切り口から入った。ただ、パソコンで完結してしまう方向には興味を示さず、代わりに、猫になるかどうかはわからないけど、と前置きをしながら、紙で即興的につくってみるプランを提案された。
この本に登場する23匹の猫は、服部さんがまっさらな紙に即興でジョキジョキとハサミを入れて切り取った紙の猫である。それを事務所の片隅に置いて、フラッシュを焚いて撮り下ろした。だれよりも、服部さんが身体を動かして、偶然のデザインをたのしむように出来上がっている。表紙と見返しをNTラシャの「るり」色で包んだのも、服部さんのアイデア。ちなみに、BONBOOKシリーズで、『Paper Cats』の後に刊行された『うたのほん』の著者で漫画家の高野文子さんは「服部さんが青なら、わたしはきな粉をまぶしたような色がいい」と言って、黄色い本になった。高野さんの『ドミトリーともきんす』(中央公論新社)を装丁したのが服部さんだった。
本書をつくった動機や背景について、詳しくは刊行時のインタビューも合わせてご覧ください。「カメラでグラフィックデザインする」のくだりは、とくに服部さんのデザイン観がとてもよく表れていると思います。
>BONBOOK刊行インタビュー
Text by 櫛田 理
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