Mystery of the Palace Crown / 官冠神秘抄

Bibliographic Details

Title
Mystery of the Palace Crown / 官冠神秘抄
Publisher
Manuscript / 写本
Year
Unknown
Size
h240 × w170 × d10mm
Weight
80g
Pages
70page
Language
Japanese / 日本語
Binding
Japanese-style book binding / 和綴じ
Materials
Japanese paper / 和紙
肉筆画が描かれた雁皮紙を綴じた世界に一冊の写本。江戸末期、文化3年頃の作とされているが、だれが何のためにこの本を作ったのか、よくわからない。この手稿本は、『冠帽図会(かんぼうずえ)』の写本である。冠帽というの字のごとく、カンムリやボウシなど古来からの日本人の「かぶりもの」のこと。この図譜では、飛鳥時代に聖徳太子が定めた「冠位十二階」以降の天皇や皇太子が大儀(即位や朝拝)の際に着用した「冕冠(べんかん)」など28種類のハットが描かれている。

京都大学貴重書資料デジタルアーカイブで見られる1840年に刊行された松岡辰方編『冠帽図会』と本作を比較すると、絵こそ若干おおらかだが、文章で解説が付いている点では、より実用的と言えそうだ。江戸時代、武家官位の服装には色形に関する様々な決まりがあり、実用本として装束に関する書籍は一定の需要があった。それら書籍の代表的な著者が松岡辰方(まつおか・ときたか)や松岡の弟子の本間百里だった。松岡辰方は、塙保己一に国学を、伊勢貞春、高倉永雅に有職故実を学び、和学講談所で会頭を務めた大変立派な人物である。著作は『位階便図』『装束織文図絵』、『冠帽図会』、『織文図会』、『女官装束織文図会』等。そう、海外の美術館キューレター好みは、松岡辰方の作品だったである。

中身に少し触れてみよう。日本の帽子の歴史を遡れば、五世紀頃の埴輪がすでに被っていた。「古事記」や「日本書紀」には、はやくから「冠」や「笠」などの語が見られ、飛鳥時代、平安時代には朝廷で帽子の着用に関する規則が確立、その後紆余曲折あったものの、江戸時代(1687)の大嘗祭で刺繍で冠全体に模様をほどこす形式で冠の文が復活している。それもあってか、江戸時代に入って「有職故実」の研究者が現れた。「有職故実」とは朝廷や公家の礼式・官職・法令・年中行事・軍陣などの先例・典故をまとめたもの。例えば、河内国の壺井義知は民間の出でありながらも、官職・装束の研究において当代随一とされ、公家さえもが教えを乞うほどだったと言われている。そこで、この「官冠神秘抄」である。表紙に「神秘抄」と書かれているところ、どうも研究者が絵師に依頼したか、或いは大変筆達者な研究者が自ら書き写したのではないかと推測される。そもそも好奇心のないところその知識慣習は歴史か知識に留まり、「神秘」は存在しないのだから。
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