クチケル

Bibliographic Details

Title
クチケル / Kuchikeru
Author
L.A.Tomari. / 泊昭雄
Editor
Ema Otobe / 乙部恵磨
Designer
Eriko Ota / 太田江理子
Director
Book Director + Editor: Osamu Kushida / 企画+編集:櫛田 理
Images
L.A.Tomari. / 泊昭雄
Publisher
TOSHO PRINTING CO., LTD. / 図書印刷株式会社
Year
2024.2.1
Size
w148 × h210 × d10mm
Weight
300g
Pages
64 page
Language
Japanese, English / 日本語、英語
Binding
Hardcover / ハードカバー
Materials
Cover: Medical gauze / 表紙:医療用ガーゼ
Edition
Limited Edition of 2500 copies / 限定2500部
Condition
As New / 新品
ISBN
9784910462233

翻訳:まいるす・ゑびす / Miles Yebisu 、シリーズ造本設計:田中義久、制作・取次:FRAGILE BOOKS、販売協力:無印良品 MUJI BOOKS、特別協力:辻 和美、内田鋼一、高橋酒造株式会社、印刷製本:図書印刷株式会社

ガラスは、
ちょっと欠けたくらいがいい。


写真家の泊昭雄が「クチケル」という独自の世界観で、ガラスの被写体だけを撮りおろしたアーティストブック。本書のためにあつめられたガラスのオブジェは、金魚鉢やラムネ瓶、無印良品の黎明期に登場した「ガラス器」や仁丹を入れていた古い小さなボトルなどなど。あやうく捨てられていたかもしれないような透明の被写体ばかり。なかには、辻和美さんや内田鋼一さんの手控えの品から、京都の「大吉」や西荻窪の「poubelle」や栃木の「茂呂」といった骨董・古道具界の名店主から譲ってもらったものも登場します。クチケル世界に寄せて、宮沢賢治、岩本素白、寺田寅彦、柳宗悦、リルケ、開高健の言葉、書き下ろし「ものたちの誰彼」も収録。表紙装丁は、医療用ガーゼ。

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編集後記:


はじまりは、2023年の立春ごろだったでしょうか。

「泊さん、ガラスの本を作りませんか」と、勢い半分の乱暴なご相談に、即答で「あ、本、作りましょう」とお返事をくださって。

その後、まだこっちはどんな本にしようか、とあれこれ考えているうちに、じぶんの足でどんどん各地の古道具屋を訪ね歩いては「この様な見つめ方、ありですか?」とか「入り口が少し欠けていて綺麗でした」とか「もう少し撮ってみます」といって私信のように写真が届く日々がはじまりました。

そうして集まってきた被写体は、みんな壊れたり、痛んでしまって、もとの用途では使えないガラス製品ばかり。すべて泊さんが選んだものです。いくつか櫛田の私物も混ざっていますが、どれも泊好みのものたちで、「ものに力が無いと、いい写真はできない」と、断言していたこともじんわり印象的でした。

デザインは、泊さんが全幅の信頼を寄せている太田江理子さん。かつて、太田さんが副田高行さんのところに身を寄せていた時代からの仕事仲間で、一見物腰は柔らかそうで、そのじつ折れない芯があって、きっちり仕事をやりきるタイプ。今回は、泊さんから「もっと不良になれ」という、ふたりにしか分からない言い方で、本人には心当たりがありそうな助言が途中途中あったようで、四角四面の枠からちょっとはみ出したデザインの工夫が散りばめられています。

ところで、本書のタイトルにもなっている「クチケル」は、泊さんと雑談しているときに、泊さんの口からポロッと出た言葉でした。はじめて耳にする言葉で、その場で意味や語源を引いてもどこにも載ってないので、きっと言い間違えか、鹿児島のふるい方言かとおもっていましたが、あんまり堂々となんども言うものだから、いよいよ面白くなってきて「く・ち・け・るで合ってます?」と聞くと、まだスタイリストの仕事をしていた駆け出し時代に関西で使っていた言葉なのだとか。「ちょっと欠けたくらいのもの」を指す符牒なのだそうです。

不完全なものの美、この見方でガラスをみつめること自体がおもしろい、と感じました。およそ四千年前から使われてきた素材なのに、ガラス製品はよっぽどのモノじゃなければ不完全のまま残されることはありません。ちょっとチップしたくらいで、すぐに危険物のレッテルを貼られ、不燃ごみになるか、リサイクルの日に出されていってしまう。そんな、きわめてあやうい存在の、古いガラスのオブジェだけで一冊をつくろうではありませんか、と意気投合。

本のタイトルは「クチケル」に決まり、通常版とあわせて特装版も用意することになり、本を空間にひろげる写真展の開催も決定。「ものたちの誰彼(たそがれ)展」として、2024年2月2日から3月25日まで、無印良品銀座の6FにあるATELIER MUJI GINZA Gallery2で開催されます。どうぞお運びください。

こわれやすい本をたいせつに扱いたいFRAGILE BOOKSとしては、いかに「クチケル」をテーマに本を拵えるか、練りに練りました。通常版では、医療用ガーゼを表紙の装丁に使用しました。こんなやさしい手触りの本はないのではないかな。特装版では、無地の大型本に通常版未収録の写真を含む35点の写真を挟み込んでいます。本に直接印刷しなかったのは、綴じた紙の束(無地の本)を緩衝材のように仕立てたかったからで、それを丸めてガラスのボトルが入っていそうな紙の筒に入れました。手が掛かるので300冊しか作れないけれど、こわれものをそっと取り出すようにして、クチケル世界を体験してもらえたらと思います。


櫛田 理



Profile


泊昭雄  / Akio Tomari

フォトグラファー。1955年 鹿児島生まれ。インテリアスタイリストを経て、1993年 フォトグラファーとして独立。2001年ギャラリーWALL 南青山設立に参加。2004年 季刊誌「hinism」を創刊。2007年 モノクロマガジン「nagare」、2018年「hinism vol.10」(AXIS社)、2020年「hinism vol.11」(wall社) 発刊。広告写真、写真集などを手掛け幅広く活躍し現在に至る。

https://www.littaitomari.jp/

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