重なる箱 8

Bibliographic Details

Title
重なる箱 8
Artist
コイズミアヤ / Aya Coizumi
Year
2022
Size
h232 × w265 × d108mm
Weight
890g
Edition
Unique
Condition
New / 新品

「重ねる箱」の最新作は
壁にかけられる
白亜の建築。

コイズミアヤの造形作品を代表する「重なる箱」シリーズ。初期には、階段や柱などミニチュアの建造物を内包する〈箱〉を制作していた作者が、〈箱〉であることが生み出すエネルギーを、純粋な“かたち”へと変換していく試行錯誤の過程で発見した「入れ子の箱」という発想。入れ子といっても、葛籠(つづら)やマトリョーシカ人形のように、順番にかさねて入れる求心的なネスティング構造ではなく、遠心的にズラしていく独自の方法。この「入れ子と遠心」の発想から生まれた「重なる箱」の作品群をご紹介します。

この「重なる箱 8」はシリーズの最新作の一つです。(2022年6月時点)

少ない構成要素ながら「斜め」の要素を入れたことで、「重なる箱」シリーズの新境地を切り開いています。ブルータリズム建築のように立ち上がった物質は、削って削って残された一本の芯のように、長編の作品が一片の詩に凝縮されたように、あるいは一筆に宇宙が内包されるように、余白のうつくしい作品です。壁にも掛けられるというのも、うれしい驚き。

コイズミさんにとって、幼少期から大好きだった「箱」の存在。それから、よく遊んだプラレールとダイアブロック。そして、共に「内と外」「開いて閉じる」という共通点を持ち、内に膨大な時空を秘めている「書物」へのシンパシー。それらが見事に結実しているように見える「重なる箱」シリーズの最新作は、ほぼA4サイズという大きさもちょうどよく、個人的にかなり好きな作品です。

本の側に立って見ると、ものとして本をオブジェ化した作家は過去にたくさんいたけれど、「読書のイマジネーション」あるいは「閉じた本のなかの時空間」を構造化したアーティストはほとんどいないのです。それほど前代未聞のことをやり続けているコイズミアヤの「重なる箱」シリーズから、最新作のご紹介でした。


Text by 中澤健矢(FRAGILE BOOKS)

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