アンゼルムの門 3

Bibliographic Details

Title
アンゼルムの門 3
Artist
コイズミアヤ / Aya Coizumi
Year
2022
Size
h192 × w150 × d113mm
Weight
1.45kg
Materials
シナ合板、文庫本(ヘッセ『メルヒェン』新潮文庫/高橋健二訳)
Edition
Unique
Condition
New / 新品

菖蒲を奥に秘めた
白い神殿は、
内なる世界への通路。

«アンゼルムの門 3»は、作品の一部としてヘッセの『メルヒェン』を取り込む造形作品です。天アンカットでおなじみの新潮文庫が、寸分の狂いもなくぴったりと収められています。「開く」と「閉じる」など、おなじ共通作用を持つ仲間として、「箱」と「本」に着目してきたコイズミアヤにとっては、異色の作品です。

1冊の本の特装版や愛蔵本を仕立てるのではなく、”がわ”や"まわり"を作ってしまうのが、まさに造形作家の真骨頂。コイズミさん自身、そのラフさが好きだという文庫本の肌色と、全体を覆う白のトーンと輪郭線のコントラストが印象的です。前作 «アンゼルムの門 2» と同様に、ヘッセの短編「アヤメ」(『メルヒェン』に所収)をモチーフとしながら、趣の異なる作品になっています。

神殿を彷彿とさせる白い構造物。岩壁のあいだで屹立するその姿は、神々しくもあり、内面の世界へとつづく通路のようでもある。じっと正面から眺めていると、みるみる自分が縮小していって、気づいたら神殿を下から見上げている、なんて空想にしっかり没入してしまいました。


コイズミさんが最も印象に残っていると語る作中の一文を紹介します。

この世のあらゆる現象は一つの比喩であり、そしてあらゆる比喩は、その準備ができていれば、魂がそれを通って、そこでは汝と我と昼と夜がみな一つであるような、世界の内面に入って行くことができる、開かれた門なのである。

ーーー「アヤメ」1973年(ヘルマン・ヘッセ著/高橋健二訳


作品にセットされている文庫本『メルヒェン』を開いてみると短編の「アヤメ 」を収録している章だけ、ノドの部分がアヤメ色に染められています。読んでいるあいだに、物語の向こう側へ、ノドの奥のそのまた奥に吸い込まれてしまいそうな、不思議な魔力を感じました。


Text by 中澤健矢(FRAGILE BOOKS)

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