ビスクドール

Bibliographic Details

Title
Bisque doll / ビスクドール
Artist
Anonymous
Year
Early Showa era / 昭和初期
Size
h86 × w 40× d22mm (doll) , h72 × w102 × d143mm(Sofa)
Weight
800g
Materials
Unglazed, felt / 素焼、フェルト(人形)、 paper, core material unknown /紙、芯材不明(ソファ)

ソファに腰かけた
ビスクドールの
何かはじまりそうな予感。

ビスクドールの座った体勢が、何ともかわいい。 ただかわいいからと言う理由以外、深く考えていなかったのですが、もしかすると座っているその姿勢の前後に何か始まりそうな或いは、し終わった、そんな“予感”を感じることが魅力なのかもしれない。

ビスクドールは、19世紀ヨーロッパの貴婦人や令嬢たちのあいだで流行したお人形。大きくは、座る体勢が取れるものを「四ツ活」、手だけ動かせて直立のものを「手活」、目をパチパチ出来るものを「スリープアイ」の3種類に分類されます。

ある時、別に仕入れていたミニソファの上に、妻がこのビスクドールを座らせて眺めていました。 足を広げてソファに座り、どこにも焦点が合っていないうつろなビスクドールにクスクス笑いながら、「何か始まりそうじゃない?」 のひと言。座った体勢に潜んでいた“予感”という、時間の奥行きみたいなものを感じたのかもしれないと、なんだか腑に落ちたのです。それからというもの、このソファとビスクドー ルの組み合わせは、ぼくにとっては「予感のセット」です。 地べたに座り込む体勢から立ち上がるまでの中間姿勢をとって、何かはじまりそうな”予感”を漂わせて。



Text by 都築重則