空手来空手去
具本昌(以下、クーさん)とは、昨秋、使いかけの石鹸の写真集「echo (エコー)」を百部限定で作ったばかりですが、こんどは「空の箱」を写した一冊です。
金沢の犀川沿いのギャラリー「factory zoomer /life」で、オリジナルプリントの展示と合わせて、完成見本のお披露目と予約受付がはじまります。今回も少ない部数しかおつくりできないので、会期中は展示会場だけのご案内となります。初日をむかえる来週24日(金)には、クーさんも韓国から来日し、わたしたちも在廊します。春の金沢で、お会いできましたら。
この本は、空っぽの箱、を写した連作です。これまでどこにも出さず、未発表のまま、長いあいだ秘められてきました。箱の中に入っていたものは跡形もなく、残されているのは、わずかなシミやホコリだけ。どれもどこにでもありそうな、なんでもない空箱です。撮影の過程で、クーさんの胸中には、こんな言葉が去来していたそうです。
空手来空手去
くうしゅらいくうしゅきょ
呪文みたいですが、「何も持たずにやってきて、何も持たずに去る」という禅語です。クーさんの写真観や人生観が、にじみ出ています。いや、単ににじみ出ているというより、この空箱シリーズには、クーさんが追い求めてきた「時間の痕跡」がもっとも純度高くあらわれています。
ものを撮りながら、ものには囚われたくない。もはや、ものそのものは重要ではないのかもしれない。それでも痕跡を写すために、ボディがいる。これまで撮ってきたものの中には、李朝の白磁や坂田さんの古道具のように、ボディにすでに価値が宿っているものもあったけど、使いかけの石鹸には、美術的価値などなかった。それが心地よかった。そんな石鹸の延長線上で、クーさんも人生のたそがれ時に差しかかりながら辿りついたのが、この空箱のシリーズなのです。そう思わずには、いられません。
書名は「空手」です。カラテではなくて、クーシュです。造本は、それぞれ手ぶらで眺められるように、一枚ずつ立てかけられるスタイルにしました。
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出版概要
空手
具本昌
FRAGILE BOOKS
企画編集+発行:櫛田 理
制作進行:田川いちか
デザイン:小島沙織+島田耕希
印刷:藤原印刷
合紙加工:泰清紙器製作所
ミーリング加工:望月製本
スリーブ箱:岩㟢紙器
サイズ:本体 267 × 200㎜
シート枚数:16枚
刊行日:2026年6月1日
部数:限定250
発行元:FRAGILE BOOKS
予価:25,000円(税込)
※全てにナンバースタンプとサイン入り
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展示
2026/4/24(金)-5/24(日)
12:00→18:00
場所:factory zoomer /life
住所:石川県金沢市清川町3-18
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Profile
具 本昌
クー・ボンチャン
1953年、韓国ソウル生まれ。延世大学の経営学科を卒業後、ドイツに留学しハンブルク美術大学で写真を学ぶ。1985年に帰国して以降、アーティスト兼展覧会キュレーターとして韓国写真界を牽引し、そのシンプルでミニマリスト的な写真言語は、韓国のアートシーンに独自の存在感を確立してきました。2025 年には写真家として初めてサムスン・ホアム賞(Samsung Ho-Am Prize)を受賞。白磁や仮面、石鹸や古道具といったものが内に秘めている小さな物語を拾い集め、わずかな時間の痕跡に視線を注いでいます。著書は『White Vessel / 白磁』(Yido / 2015) 『新版 くらしの宝石』(BONBOOK / 2023)ほか多数。

